近年追い続けてきた今その時に在るべき芝居。手法論が克ったものはカルチャーを経てメディアの遡上に乗せられようとしている。ここらで逆のベクトルの芝居、物語性の獲得に成功したものに還っていく流れが出ているのでは?というものに対する答えのひとつがこの劇団かもしれない。
時は日露戦争後の断崖絶壁に囲まれた港、海賊の末裔である人々が住む通称「海猫街」が舞台。政府御用達の商社が軍関連の基地候補の視察としてくる。町に金が落ちてくることを願う人々は彼らを招き入れるが・・・
荒々しさや猥褻さを持ったこの時代の人々の階層、因習、差別、神を遺した海への畏敬、旧きものの破壊と時代の先へ行こうとする者の欲望、全てを飲み込む物語に在る神の息吹を、海女をはじめとする登場人物たちから感じられることができる。
時代や人の熱、時や神への無常観を醸し出しながら、この地に生き抜いた人々を叙情性たっぷりに描いている。
浪漫というべき芝居の持つ物語性の本質がここにはある。