KAKUTAは良いなあ。KAKUTAはすごいなあ。芝居ってやっぱり良いなあ。
ここ一年は関西の劇団を褒めることが多いし好みの劇団も多いのが事実だけれど、関東の劇団でも信頼度が高い外れのない劇団がある。そのひとつがKAKUTAだ。横浜から生まれたこの劇団は、小劇場のいちばん良質の部分を感じさせてくれる雰囲気と空間を生み出してくれる。今回の芝居はあるアパートを舞台にした2作品を交互にやる趣向。今日見たものは、プラチナペーパーズとの合同公演の第二弾にして新作として主宰の桑原裕子さんが書き下ろしたもの。演出は堤泰之。舞台は72年のあるぼろアパート。世間は同棲ブームにわいていたり、学生運動の名残も若干あるような感じ。小説を書いたり引きこもったりしているアパートの住人の男のもとに酒屋の跡継ぎの男と彼女が遊びに来たり、後輩が火事に焼け出されたりして一緒に住んだりすることになる。隣の部屋では、大家さんの遠縁の女の子が上京してきたり、その腐れ縁の友人が押しかけてきたりする。同じ階のほかの部屋では、ある姉妹が男を引き入れて商売に励んでいたりする。お互いに分かっちゃっているんだよね、的な女たちの微妙な関係やその感情の吐き出し方のディフォルメ化が桑原さんらしく実に良い。この辺の感覚は角田光代さんの描く作品世界と近いものを感じるな。何時の時代にもある生きるうえでの遣る瀬無さの間の表現、芝居のテンポを換えるドタバタ感もまた良し。役者では、真っ直ぐで熱い後輩ハルオ役の佐藤滋のこの時代らしい男の馬鹿な一本木ぶりはさすがの演技だし。遊び人の楽しさと倦怠と適当さを演じた酒屋のノラ役のバビイも桃唱309の役者ということで実力ありを示している。青年団の役者さんやKAKUTAの川本裕之、矢島淳子、桑原さんの存在感も文句なし。体験したことがない時代、でもでも懐かしく見てきたような時代と空気。小劇場の良い芝居、そのものを久しぶりに感じさせてくれた。
30年後舞台の旧作『青春ポーズ』の再演も何とか機会を作ってみよう。